クライアントの要求に応える美しさとクオリティを実現
東京における建築事業という小野組の新たな挑戦。その大きな一歩が結実しようとしています。デザインにこだわり、高品質を追求するデザイナーズ賃貸マンションの建設は、今、引き渡しに向け最終の段階を迎えました。建物そのものだけでなく、初めてのクライアントや初めての協力業者との信頼関係をも築き上げた、関東支店建築部門の若きリーダー・磯谷さんが15カ月を振り返ります。
※この記事は、「OZIO両国Ⅱ」の後編です。
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この記事に登場する人
磯谷 哲平
関東支店 アーキテクチャーG マネジメントリーダー
何日にもおよぶ竣工検査。
2021年7月1日に着工した9階建てマンションは、2023年8月初旬から小野組の自社検査、公的な完了検査、設計監理者による完了検査、そして、クライアント立会いによる竣工検査を受けました。自主検査にて細かく確認、修正を行ったつもりでしたが、クライアントであるデベロッパー様の検査にて全ての動作確認や目が届きにくい箇所や隅々までの汚れ、傷などの検査を2日間におよび実施され、更なるご指摘が上がりました。
何人もの様々な目線で何日にもわたり検査を行い、実際にマンションを利用する人達が快適に不自由なく利用できるよう、納得のいくまでより高い完成度を目指しました。
打放しコンクリートの精度を上げる。
このマンションは都会的な打放しコンクリート壁を採用しています。現場でコンクリートを打設するので、施工者の技術力が仕上がりを左右します。均一な仕上がりを要求されるため、まず私自身の経験やネットワークを駆使して、同業や設計事務所様との交流を広げて意見交換や情報収集に努め、あらゆる場合に備えました。さらに、現場では、1階ごとに事前と打設後に関係業者全員参加の検討会を実施し、反省や改善点を次に活かすということを繰り返しました。上階に進むにつれて精度も上がっていき、全体としては満足できる仕上りとなりましたが、私個人としてはまだまだ課題は山積みで、更なる飛躍を目指していこうと思います。
一部の壁では、杉板の型枠を使うコンクリート打放しも行いました。専用コンパネを使うことにより時間もコストもかかるのですが、無機質なコンクリートに自然の木目が浮かびあがり、独特の風合いや高級感を醸し出すので、デザインにこだわる店舗や個人宅などに用いられ始めています。東京の現場ではこのように高い技術や流行の意匠をいち早く経験できるので、刺激的です。
金属の輝きを塗りこんだ壁。
このマンションの意匠の最大のこだわりは、何といってもエントランスの壁と天井に採用した特殊塗装でしょう。金属を配合した塗料を専門業者が塗っていくので、金属固有の輝きや質感が表せると同時に、グラデーションや立体感も造形できるのです。施工にはクライアントも立ち合って細かく指示を出し、さながら壁画を仕上げるように進めていきました。
エントランスの天井には白銀に輝く塗装が、壁面には躍動感に満ちた大波を表現した塗装が完成。照明デザイナーが手掛けた光を受けると存在感がさらに増して、マンションではなく美術館にいるようです。最先端の技術が経験できたのは、ハイグレードマンションを手掛けたからこそ。本当に貴重な経験ができました。
「人と人」の結びつきで危機を克服。
総じて順調に進んでいたプロジェクトでしたが、実は一度、予期せぬ危機に直面しました。が、すぐさま段取りを組み直し、予定工期を変えないよう最善を尽くしました。関係協力会社に連絡し、直ちに人数を集めてこの危機を打開しました。
危機を乗り越えられたのは、スケジュールを綿密に組み前倒しで進行してたこともありますが、それ以上に、こちらが困っていると知ってすぐに行動してくれるほど協力業者と信頼関係が築けていたからだと思います。やはり人と人との関係性は大事です。顔を見て打ち合わせをし、折を見て親身に対応してきたことがここに繋がったのだとつくづく思いました。多くの人達に助けられた現場でした。
次の大きな挑戦が迫っている。
いよいよ9月28日が引渡しです。これだけの規模でこだわりの詰め込まれた現場を金子君と私のふたりで完成できたことに、よくやり遂げられたと達成感に包まれています。金子君はゼネコンで施工管理に関わったことがあるとはいえ、その経験はまだ浅く、すべての過程に立ち会うのはこれが初めてのこと。大変だったと思いますが、「東京での工事だから、自宅から通いやすくて楽でしたよ」とさらりと言います。彼も私同様、ゼネコン時代の転勤や長期出張から解放されたことで安心して仕事に向き合えたのだと思います。
私たちの技術力を認めていただき、クライアントからは同じシリーズの次の案件の打診が来ています。今より大規模なプロジェクトなので、この経験を次に生かし、更に成長できればと思います。また、これ以外にも首都圏での受注はまだまだ増えていくと思います。小野組は現場で建築の知識や経験を積みながら資格取得に挑戦できます。仲間と共にやり甲斐と楽しみを持って仕事と向き合っていきたいです。