若き技士たちの挑戦

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今回の記事は、アーキテクチャーグループ(建築)と総務セクション広報チームの初!コラボ企画。新潟県の”胎内市産業文化会館特定天井等改修工事建築工事”を長期に渡って取材敢行。その取材回数は合計…9回にも及ぶ。現場で直接見たこと、感じたことを広報チームの目線から書いてみたい。

プロローグ

複雑な工事に真剣に向き合う若き技士の姿が、とても眩しい現場だった。
この工事の目的は、多目的ホールの天井補強と音響性能の向上。ゴールを示す言葉はいとも簡単だ。ゴールに到達すれば、その対象には多くの関心がよせられるが、それまでの過程に何があって、どんな人達が関わって、どれほどの労力があったのかは霧が晴れるときのようにすっと無くなる。
私たちのほとんどはそれを知る由もない。
-それが建築の世界だ。

プロジェクトの始動

「こんな工事は滅多にないよ。」ことの発端はこんな言葉から始まった。

そう言われれば、絶対に見たい!これは好奇心の強い私に叩きつけられた挑戦状…否、招待状だと思わずにはいられなかった。ワクワクがとまらない。

ここからの話は早かった。幸運なことにいつも部署の垣根を越え広報チームを応援してくれる建築(アーキテクチャーグループ)の上席からプロジェクトリーダーの菅裕之(すが ひろゆき)さんに協力要請をしてもらった。

桜の花がひらひらと舞う4月のはじめ、アーキテクチャーグループの若きリーダー菅さんと打合せをした。私たち広報チームは、これまでの会社の広報には工事の現場やそこで働く人にスポットを当てた内容が希薄であるという問題意識を抱えていた。一方で菅さんにも、私たちと同じ意識はもちろんのこと、さらには現場で働く人を獲得(求人)するためには、現場の人や声を見せる(伝える)ことは必要不可欠だという想いがあった。良い人材を「長く」・「たくさん」必要なのは、スタッフ部門も現場も同じ。こういうベクトル合わせから、アーキテクチャーグループと総務セクションのコラボ広報プロジェクトが始動した。

テーマは『入社してから歩むだろう自分の姿』。広報チームが菅さんとその現場を追いかけ、学生や求職中の人たちが見た時に、自分自身を重ねて、未来像を描ける広報内容(記事や映像)にしたいと話はまとまった。

そのタイミングで広報チームの上席は背中を押してくれ、私たちを手放しに現場へ放り込んでくれた。

複雑を極める工事

ゴールの説明がいとも簡単な工事でも、その過程が半端ないほど複雑で緻密、経験豊富な菅さんに「まさに難攻不落」と言わしめたのが産業文化会館の工事。まずは図面だが、これが複雑を極めた。菅さんをしても、一瞬でさっと工程と完成が描けるものではなく、難解で紐解くのに頭を抱えたという。

その工程をざっと素人説明すると、こうだ。まずは音楽堂のように広い多目的ホールに、足場を組む(天井の工事に使う用途でホール全面に組むため、さながら巨大ジャングルジムのような足場だ)。

そこで既存の天井を壊し、足場をさらにかさ上げする。そこから新しい天井を付けるために必要な鉄骨やパーツ、筋交いを取り付けて…もちろんそれらを取り付けるのも一筋縄でいくわけもなかった。古い天井を外した場所には既存の鉄骨やダクト、キャットウォークetcがあり、当初の設計どおりにいかない箇所も沢山。そこで新たに設置するパーツがひとつひとつ、そこに収まるか…何百という箇所を測って検討して を繰り返した。

つまり「ここにこのパーツを設置すると書いてあるけど本当に入る?右も左も上も下も…あれ、よく見たらここに干渉するかも!?その場合こうしたらよいかな~長さは大丈夫かな?」こんなことが繰り返し繰り返し、延々続いたのだ。そうやって印をつけて、図面も直して、必要な部材を取り付けて(これも重くて大変な作業)。
ちょうど夏場の猛暑の最中だった。重い鉄骨を人力でつけたり、溶接したり…この過酷な作業に懸命に向き合う現場の人たちに目を奪われた。

円筒拡散体?!

天井補強工事の一連の作業のもう一方で、音響を改善するために天井に取り付ける円筒拡散体(金属の大きな筒)の製作が同時進行。この金属の大きな筒…これが今回の工事の取り付け方でやるのは世界初。もちろんこの世にないものを作るので、試作を重ねて、「やっぱりここが・・・」という修正が何度もあり、右往左往。
この円筒拡散体を作る協力会社さんにとっても、未だかつて作ったことの無いもの。みんなで試行錯誤に改良を重ねて完成させた。

肌に感じる涼しい風。見上げれば青空に赤や黄色に色づいた葉のコントラストが美しい秋。
ようやく新しい天井が付いて、塗装が終わると、今度は円筒拡散体の取付け。8列、合計で百数十メートルにも及ぶ直径40㎝の円筒拡散体が美しく配置された。
若き技士たちが夏の暑さや工事の複雑さにも負けず、真っ向から向き合い続け、ついに完成させた。現場みんなの底力は、しなやかで強い。

これが菅スタイル

取材を重ねるうちに見えてきたもの。それは菅さんの器用さとポジティブさ。その時々で常に難しくて大変な…話を聞いている広報チームでさえも耳を塞ぎたくなるような局面にいても、抜群のバランス感覚でひとつひとつ乗り越え、着実に前進する姿。
そんな菅さんは「出来ないという選択肢は僕にはありません。仕事の楽しさや好きな気持ちはあります。ただ…、好きと出来るは違う。仕事で自分を成長させ、置かれた状況や立場に追いつく気持ちも必要です。もちろん、最初は誰だって出来なくて当たり前^^」と屈託のない笑顔で言う。

困難なことにも、ポジティブに向かっていく…その原動力は?

「一生懸命頑張ることは大切だと思っています。やりがいは、誰かからの感謝や期待です。」

その誰かとは、職場の仲間(先輩や後輩)。それから協力会社の皆さんやお客様、そして家族。周囲から必要とされ、その気持ちに寄り添い感謝する想いがきっと、ずっとめぐり続ける。その先の未来へと。

菅さんの想いは、周囲の人たちからの信頼となって、また次の仕事にもつながっている。

「僕は右も左も分かないときに上司や先輩に本当に良くしてもらって。今はそれを返す時。後輩育成にも注力していますが、先輩として後輩を成長させる責務があると思っています。大変さと楽しさを分かったうえで、一人で歩いていけるようになって欲しいです。」

『作り繋がる』―菅さんの印象はこれだ。それは建物を作ることも、またその現場(環境)を作るのも、私たち「人」である。人が環境を作り、またその環境が人(後輩や自分自身)を作る。作り繋がることは、表には見えなくても、決して霧のように消えることはない。
それはみんなの未来へ、どこまでも繋がる道である。

この記事を書いた人

2児の母。美味しいものと昼寝が好き。好奇心旺盛な
総務セクション 高橋よし乃

  1. 工事のスタートライン—いつもここから。

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